偽りで盗むエパ枡 | |||||
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偽りで盗むエパ枡
第七の幻は、エパ枡という穀物を入れる器の中にひとりの女が座っている幻である。エパ枡は、約22〜24リットルの穀物を入れる測量道具をいう。穀物が入っているべきこの枡に女が入っているというのは衝撃的なことである。巻かれているべき巻き物が空を飛んでいるように、衝撃的で不思議な場面である。
ゼカリヤ5:5-7 私と話していた御使いが出て来て、私に言った。「目を上げて、この出て行く物が何かを見よ。」 私が、「それは何ですか。」と尋ねると、彼は言った。「これは、出て行くエパ枡だ。」そして言った。「これは、全地にある彼らの罪だ。」 見よ。鉛のふたが持ち上げられ、エパ枡の中にひとりの女がすわっていた。
御使いは、このエパ枡の中にいる女が意味することは、全治にある罪の姿だと説明してくれる。だとしたら、まず考えてみるべき質問は、なぜエパ枡という測量道具に罪悪として象徴される女が座っているのかである。
旧約でエパ枡は、しばしば商取引の不正行為と関連して言及されている。箴言20章10節では、「異なる二種類のおもり、異なる二種類の枡、そのどちらも主に忌みきらわれる」と言い、ミカ書6章10節でも「まだ、悪者の家には、不正の財宝と、のろわれた枡目不足の枡があるではないか」と指摘している。預言者アモスも、当時のイスラエルの民が最も多く犯した罪が、エパ枡を小さくし、はかりを欺いて、不正な利益を残す悪行であったと指摘している。
以前の幻で、イスラエルの民が犯した罪は盗みと偽りの誓いであると指摘したが、これもまた、お金や経済と関連している。ここでエパ枡は、偽りによる盗みに最も多く用いられた道具であった。したがって、エパ枡は、神ののろいを招いた当時のイスラエル社会の経済的な不義を表現している。高度の象徴技法である。
それならば、もう一つ思い浮かぶ質問がある。なぜ罪悪の象徴が女なのかである。男がむしろもっと多くの罪を犯したのではないだろうかと反問する人もいるであろう。これについては学者ごとに意見がまちまちである。ヘブル語で罪悪という単語が女性形だからであるという主張もあり、当時流行していた偶像がたいがい女神だったからであるという主張もある。また、創世記で最初に堕落したエバの姿であるという主張もある。みな一理あるが、私の考えはこうである。「神の前ですべての人間は女性である」と主張したルイス(C.S.Lewis)のことばを根拠にして、エパ枡の中の女は、ただ女性だけではなく、神の前で罪人であるすべての人間に影響を及ぼす悪を象徴していると見るのである。極悪非道の悪者たちを見ると、どうしたらあんなことができるのかと思うが、事実、私たちも同じ状況や境遇に置かれたら、そんなことができる人々である。エデンから追放された後、人間は罪と悪で達人の境地に達した。
本文は、『悔い改めは神の恵み』 (イ・ジェフン著、日本Duranno書院)より、抜粋したものです。