オンヌリ教会の宣教の話 | |||||
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オンヌリ教会の宣教の話
ド・ユッカン Duranno 海外宣教会(TIM)理事
2018年10月、オンヌリ教会は、実に意味深く感動的な聖日を迎えました。25年前に宣言した2千人の宣教師派遣というビジョンが達成される日だったからです。2千番目に派遣される宣教師の家庭を見ながら、熱い感動とともに、感謝があふれました。1994年、ハ・ヨンジョ牧師は、世界の失われたたましいのために、他文化圏に2千人の宣教師を派遣し、世を変える1万人の信徒の働き人を立てるという、大きなビジョンを宣言しました。当時、オンヌリ教会は、すでに5千人余りの教会員がいたので、大型教会の一つに成長していましたが、多くの信徒たちは、現実的に考えるとビジョンが大きすぎるのではないかと懸念していました。しかし、当時、韓国の教会全体が派遣した宣教師の数が4300人ほどだったので、地域の単独教会が2千人の宣教師を派遣するという考えは、無謀なものではありませんでした。ハ牧師ご自身も、「目を閉じれば、できるような気がするが、目を開けると、できないような気がする」とよく言っておられました。それでも教会は「ビジョン2000」を宣言し続け、宣教部の名も「2000宣教部」に変えて、多様な宣教の動員の働きを試みました。2千人の宣教師派遣というビジョンは、教会の方向性、すなわち共同体としての信仰告白になりました。世界のどこかに福音から疎外されている民族と個人がいるなら、教会は宣教の働きを止めないということを、教会の存在目的として宣言しました。時が流れて、多くの青年たちが押し寄せ、信徒たちが長期・短期宣教に献身し始めました。そのようにしてこのビジョンは成就し、オンヌリ教会の宣教ビジョンは、世界の教会史に例を見ないような良いモデルを示すことができました。これを通して、「宣教師2千人 / 働き人1万人」のビジョンは、一牧師の情熱とアイデアの産物ではなく、神が教会を通して成し遂げようとされたビジョンであったことが確認できました。
今月号ではオンヌリ教会の宣教の歩みについてお伝えしたいと思います。もちろん、すべての教会がオンヌリ教会のように広範囲の宣教地域に責任を持たなければならないわけではありません。それは、よく分かっています。この記事が意図しているのは、教会の宣教の働きを誇ることでも、こうするべきだと教えることでもありません。宣教される神が一つの地域教会を用いて行われた、すばらしいみわざを証しし、それぞれの教会が建てられた場所にふさわしい宣教の働きを進めていかれることを願って、紹介することです。
オンヌリ教会は、1985年、ハ・ヨンジョ牧師と、牧師と思いを一つにする12の家族により「使徒の働きのような教会の夢」をモットーに始まりました。昨日も今日も、とこしえに変わることがないイエス・キリスト(ヘブ 13:8)が今日も働かれるなら、過去の使徒の時代に存在していた教会が、わが国にも再現されるはずだと信じて、夢を抱いたのです。まず教会を正しく建て上げるために「聖書中心の教会」「福音中心の教会」「宣教中心の教会」「あわれみを施す教会」「キリストの文化を広める教会」という5本柱を決めました。それにしたがい、創立初期から講解説教とQT、一対一弟子養育、多様な聖書の学びを通して、みことばの上に福音的教会を建て上げていきました。特に、週末ごとにアウトリーチチームを送り、近郊の教会のない地域や離島を訪れて伝道し、そこに教会を建てました。また生活が困難な隣人にキリストの愛を分かち合う働きをしました。
オンヌリ教会の最も大きな特徴は、初期から海外宣教に献身してきたことです。主任牧師の最初の謝儀を渡す前に宣教師に支援金を送り、教会の創立とともに宣教師の派遣と支援を始めました。また、新年になると、第一・第二聖日には、信徒たちが一年間献げる「海外宣教献金」を決意するよう導きます。信徒たちは、毎月、その献金を献げながら、宣教師たちを覚えて宣教地のために祈ります。この献金は、開拓した翌年から今まで続けられており、聖別された口座で管理し、宣教のためにだけ用いられています。今は、3万人に及ぶ信徒たちが毎月献金を献げることにより、宣教師たちを支え、宣教現場の必要を満たしています。
オンヌリ教会の3大牧会哲学は、礼拝共同体、聖霊共同体、宣教共同体です。ジョン・パイパー牧師は、宣教の究極的な目的は、1万の民に神を礼拝させることだと言いました。その地に礼拝がないので、宣教が必要なのです。同時に、礼拝する信徒たちは必ず宣教しなければならず、聖霊の助けなしには宣教は成し遂げられません。聖霊が宣教の動力であられるからです。ですから、オンヌリ教会の牧会哲学には、礼拝と宣教と聖霊の三つが一つとなり、教会の牧会の方向性を導いています。
では、オンヌリ教会の宣教を実行していく過程について見ていきましょう。次のページにある図のように、オンヌリ教会の宣教を導いていくための五つの主要機関があります。
一つ目の機関は、宣教の中心的な役割をする「2000宣教本部」です。宣教本部は、教会全体の宣教の方向性を整え、各機関を助け、人事と財政を総括する所です。オンヌリ教会における多様な宣教教育プログラムを企画して普及させることにより、宣教の霊性を養い、地域ごとの教会と協力し、直接的・間接的な宣教への参与をうながす役割をします。同時に、対外的に宣教団体との協力と支援、ネットワークの働きも行います。
二つ目の機関は、TIM(Duranno海外宣教会)です。TIMは、オンヌリ教会が設立した超教派の福音主義宣教団体です。中国宣教に献身した一人の宣教師のための祈祷会から始まり、4年後の1992年には五つの家族の宣教師たちも含むようになり、公式に活動を始めました。現在は、50を超える国々で430人の宣教師たちが活動しています。オンヌリ教会の宣教の前衛部隊として、未伝道民族のための開拓宣教と教会開拓、弟子および指導者の養育をおもに行っています。アメリカと日本にも支部を置き(TIM America、TIM Japan)、訓練と動員の働きを行っています。
三つ目の機関は、ACTS29ビジョンビレッジです。私の働きの場であるヤンジに位置し、長期・短期新人宣教師たちの訓練と、既存宣教師たちの安息年の訓練プログラムを行っています。2年未満の短期宣教献身者のための4週間のTP(Turning Point)訓練と、5年以上活動する長期宣教献身者のためのOSOM(Onnuri School of Mission)訓練も行っています。また、最初の1期(5年)の働きを終えて安息年で帰国した宣教師のための6週間のH2H(Home to Home)訓練、そして、2期以上の働きを終えて安息年を迎えた宣教師のための4週間のH2K(Home to Kingdom)訓練が行われています。また、毎日午前に、宣教師と宣教師のために祈る礼拝をささげています。
四つ目の機関は、オンヌリミッションです。教会は、初期から韓国に入って来た移住者や留学生、多文化家庭に対して多くの関心を持ち、仕えてきました。教会に国際部を置き、英語礼拝をはじめ、日本語、中国語、ロシア語、モンゴル語などの礼拝を開き、移住者たちが母国語で礼拝することができる場所を提供しています。特に、移住労働者たちが多く集まっている地域にMセンターを置き、移住民たちのためにハングル教室を開き、韓国の文化を教えながら福音を伝えています。安山 Mセンターでは、毎週聖日に22ヶ国から来た千人以上の移住者たちが、各言語圏別に礼拝をささげています。彼らがキリストの弟子になり、訓練を受けて故国に戻り、宣教的な人生を歩めるよう逆派遣(Re-Sending)することをビジョンにして仕えています。
五つ目の機関は、A Better World(すばらしい世の中)です。これは、オンヌリ教会が設立した国際NGOであり、全人的な宣教(Wholistic Mission)を追求する機関です。伝統的な方法では宣教が困難な地域にキリストの愛で仕え、福音の扉を開く働きをしています。「すばらしい村プロジェクト」を通して、一地域社会を総合的に変化させていくことが、おもな働きです。アフリカと南アジア、北朝鮮を中心に、児童保護、緊急支援、医療および教育、地域開発などのNGO活動を通して、神の国を広げる働きをしています。
オンヌリ教会の宣教のモットーは「行くか、送るか」です。長期・短期宣教師として「行く宣教師」か、支援する「送る宣教師」となることを目指します。そのための働きとして、まず責任宣教師制度があります。教会の最小単位は地域のスモールグループであり、そのグループが5~10集まって地域グループになります。また、5~6の地域グループが集まって地域共同体になり、その共同体には、5~6家族の責任宣教師が割り当てられます。それぞれの地域共同体が一つの宣教師家庭のために責任を持ってとりなして祈り、支援をします。夏には現地に行って宣教を助け、宣教地を具体的に心に思い浮かべられるようになります。それを通して、信徒たちと宣教の現場が近づくことができます。
第二に、宣教スクールがあります。オンヌリ教会の役職者になると、受講することになっている必須科目がありますが、そのうちの一つが7週間の「Why Mission スクール」です。これまで私が連載してきた内容は、まさにWhy Mission スクールの内容を要約したものです。これを通して、教会の宣教ビジョンを理解し、信徒各個人が宣教に携わることができるよう助けるのです。それ以外に、北朝鮮宣教スクール、イスラム宣教スクール、専門家宣教スクールなど、多様な領域の宣教スクールを開き、自らの生活の領域で宣教的な人生を歩めるよう助けています。
第三に、とりなして祈るために集まります。教会の中では、毎月1、2度ずつ、様々な地域の宣教のためのとりなしの祈りの集まりが持たれています。彼らのほとんどは、アウトリーチに行って来た後、その地と宣教師のために祈り続け、支援する信徒たちです。女性たちのチームでは、毎年「祈りの宣教スクール」を開き、宣教のためにとりなして祈る者を育てています。このような祈りの労苦と献身があったからこそ、今日まで宣教を続けることができました。
ハ・ヨンジョ牧師から始まった宣教のビジョンは、イ・ジェフン牧師を通してさらに広がり、堅実に成長しています。他文化圏宣教とともに、国内の支援の働き、ラブ・ソナタなど、どの働きも縮小されることなく続けられ、そのビジョンは継承されています。オンヌリ教会は、財力と人力が大きいから、世界宣教を担うことができると誤解されがちです。もちろん、受けた祝福が多いほど、多くのことを行うことができます。しかし、持っているものがあるから宣教をすることができるのではなく、福音の唯一性と世界に対する神のみこころを知れば、宣教に献身するようになります。それが、教会の存在目的であり、イエスの再臨に備えるクリスチャンの使命です。日本の教会が「主を知ることが、海をおおう水のように地に満ちる」(イザ 11:9)日まで、止めることのできない神の働きに積極的に携わることを期待します。
ド・ユッカン
韓国 長老会神学大学院(神学修士号)。
米国 フラー神学大学院(宣教牧会学博士号)。
韓国 ヤンジ・オンヌリ教会 主任牧師。
Duranno 海外宣教会(TIM)理事。
本文は、『リビングライフ STORY 2020年11月』 (Duranno書院)より、抜粋したものです。