心の筋肉を育てる訓練 | |||||
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心の筋肉を育てる訓練
ユ・ウンジョン グッドイメージ心理治療センター代表
スポーツの専門書を10冊読んでも、健康になれるわけではありません。実際に運動して、筋肉を育てなければなりません。同様に、心理学の本を10冊読んだからといって、幸せになれるわけではありません。心にも筋肉があります。心の筋肉を育てるためにも、意志的な努力と訓練が必要です。
息抜きと柔軟性
心の筋肉を育てる最初の訓練は、携帯電話のように充電することです。疲れる前に、あらかじめ充電しておかなければなりません。私は診療室に来た人が主婦であれ、会社員であれ、心の筋肉を育てるための第3の空間、すなわち何の義務もない場所を作ることを提案します。家にいる主婦は家事に退勤時間がなく、いわゆるワーキングママは会社から退勤しても、再び家に出勤します。何としてでも静かな場所を見つけて息抜きをしてください。「そんな時間どこにあるのですか。私の代わりはいないのです」と言いながら、多くのことを一人で完璧にしようとすれば、すぐに疲れて傷ついてしまいます。
2つ目の訓練は、柔軟性を育てることです。自分の立場を捨てて、ほかの人の立場で考えるようにするのです。精神疾患には、自己中心性から来るものがたくさんあります。悔しくて腹が立つのは、自分が正しいと思うからです。物を売る人はいつも安く売ったと考えますが、物を買う人はいつも高く買ったと考えます。だれが正しくてだれが間違っているかではなく、立場が違うからです。なぜあの人はこれを高いと言うのか、私は安く売ったのにと、怒る必要はありません。「あの人からすれば高いと思うかもしれない」と柔軟に相手の立場に立って考えてみる必要があります。
ポジティブな考えと限界の認識
3つ目の訓練は、ポジティブな考えを習慣化することです。ポジティブな考えは自然にできるものではありません。意志的に自分に有利なほうに考える努力が必要です。ネガティブな考えは、いつも自然にやって来ます。宗教改革者マルティン・ルターは「鳥が私の頭の上を飛んで行くのは仕方ないが、私の頭に巣を作ることは避けることができる」と言いました。診療室で、よく次のようにお話します。ネガティブな考えが自分の頭を通り過ぎるのは仕方ありませんが、その考えが信仰となって自分の意志と行動を支配しないように努力することはできると。筋肉を育てるために繰り返し訓練が必要であるように、ネガティブ思考をなくし、ポジティブ思考をすることにも、訓練が必要です。その方法は、聖書のみことばをしっかりと握り、その他の否定的な考えを聖書に照らし合わせて正すことです。精神医学では、このような脈絡のためか、行動治療が行われます。認知行動治療は、合理的な考えを基本枠とし、非合理的な考えを探し出して矯正する心理療法です。
4つ目の訓練は、認められたいという欲求を捨てて、自分の限界を受け入れることです。その度に心の筋肉が育ちます。出エジプト記18章を見ると、モーセも荒野で多くの苦労をしました。数多くの民が事件のさばきを聞こうと朝から晩までモーセの前に立っていました。モーセのしゅうとイテロが行ってみると、モーセの仕事は手に余りました。イテロは、モーセに、仕事をそのようにするのは良くない、一人でするには荷が重すぎると言って、助言を与えます(出 18:17~18)。民の中から能力のある人たちを選んで、民の千人の長、百人の長として立て、彼らがモーセの仕事を一緒に担うことにより、荷を軽くするようにというのです。モーセは、しゅうとの言ったとおりに、千人の長、百人の長を立て、難しい事件は自分のところに持って来させましたが、小さなことは彼らにさばかせました。モーセが自分の限界を受け入れ、ほかの人に認められようとする欲求を捨てたため、そうすることができたのです。
クリスチャンの中で、心が傷つきやすい人をよく目にします。すべてのことに対して基準が高く、一生懸命一人で働き、休むことを知らない人は、心の筋肉を育てる訓練を今すぐ始めましょう。
心が傷つきやすく柔軟でないなら、
心の筋肉を育てる訓練を今すぐ始めましょう。
上記の内容の一部は『傷つかずに最後まで愛する』(キュジャン、2018)から引用したものであり、該当出版社の同意を得て掲載しています。
本文は、『リビングライフ STORY 2021年3月』 (Duranno書院)より、抜粋したものです。