肥満・過食症の癒やしと自尊心回復 | |||||
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肥満・過食症の癒やしと自尊心回復
ユ・ウンジョン グッドイメージ心理治療センター代表
心理的空腹の外的表現、「偽の食欲」
肥満クリニックで多くの患者さんと接する中で、私は食事の選択と摂取も霊的訓練の一つであることに気づきました。ほとんどの人たちが体重を減らすための食事法についてはよく知っていますが、それを行動に移すことができません。「私はまたこんなに食べてしまいました。たくさん食べて満腹なのに、食欲を止めることができなくて、ずっと食べ続けてしまいます」と自分を責める人にもよく会います。食べることを自制できないため、太り続けるのですが、からだは苦しんでいます。パウロの告白が思い浮かびます。「私には、自分のしていることが分かりません。自分がしたいと願うことはせずに、むしろ自分が憎んでいることを行っているからです」(ロマ 7:15)。使徒パウロでさえ、自分の意志と反対の行動をしてしまう自分の弱さと内的葛藤を告白しているのです。
「院長先生、痩せてから、私の人生が変わりました。毎日が幸せです。からだも軽いし、気分も晴れ晴れしています」 うつ病だった人が体重調節に成功した後、自分の変わった外見から達成感を感じ、自信を取り戻して喜んでいる姿を見ると、精神科医としてやりがいを感じます。研究によって異なりますが、体重調整に成功した人の50~90%は2年以内に元の体重に戻るという統計があります。体重が再び増える人には、多くの場合、共通点があります。彼らにとって食欲は、「食べ物を食べたい」という欲求だけでなく、「慰め」と「関係」が必要だというサインなのです。私はこれを一般的な食欲と区別し「偽の食欲」と定義しました。この偽の食欲は、心理的な空腹と関連しています。また、お菓子やパンなど特定の食べ物を減らせない人は、一種の中毒である「食事依存症」と考えられます。彼らの内面には、どんな食べ物でも満たせない慢性的な空虚感がありました。
飢えと空虚感を満足させる秘訣
クリスチャンの精神科医である私は、神様にあって慰めを得られず、食べ物で慰めを得ようとする人々を見ながら心が痛みました。ヨハネの福音書6章で、イエスは「わたしがいのちのパンです」(the bread of life)と語っておられます。肉体のいのちを維持するのに必要なパンにたとえて、ご自分を「いのちのパン」と語られたのです。「わたしがいのちのパンです。わたしのもとに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者はどんなときにも、決して渇くことがありません」(ヨハ 6:35)。いのちのパンであるイエス様を食べる人は、永遠に飢えず、また、イエス様が生ける神様のゆえに生きられるように、イエス様を食べる私たちもイエス様のゆえに永遠に生きることができます。
食事を自制できない患者さんたちを見ながら、このみことばの意味をさらに深く黙想しました。すべての人間には満たすことのできない飢え渇き、つまり、エデンの園の父を恋しがる飢え渇きがあります。そのため、主は「わたしにとどまりなさい。わたしもあなたがたの中にとどまります」(ヨハ 15:4)と言われました。このみことばと肩を並べうる「愛の関係」が、この世に存在するでしょうか。これは、肉親関係以上の親密さです。すべて世にあるもの、すなわち、肉の欲、目の欲、暮らし向きの自慢は、御父から出るものではなく、世から出ます(Ⅰヨハ 2:16)。偽の食欲も、この世から出るものです。人間の飢え渇きと空虚感は、この世のものでは満たされません。永遠に変わらない霊的ないのちだけが、完全な満足を与えてくれます。
私は、飢えと空虚感に勝てず、元の体重に戻ってしまった人たちが、自分を責め、自尊心まで揺るがされる姿をよく見ました。自尊心の喪失が肥満と過食症の根であると確信し、この10年間、グッドイメージ心理治療センターを運営しながら、自尊心を高めるためのプログラムとして「自尊心パーティー」を行っています。自尊心「学校」、自尊心「授業」など、ほかにもいろいろあるのに、なぜ「パーティー」と名づけたのかと尋ねられることがあります。私は笑いながら答えます。「自尊心は成績のように勉強して得られるものではなく、神様にお会いして究極の親密さを味わうときに回復します。互いを祝いながら喜ぶことだから、自尊心パーティーなのです」
私たちのからだは主の宮ですから、私たちは管理者としての使命感を持って、自分のからだを世話する義務があります。健康な食習慣を養い、規則的に運動し、不必要な脂肪と老廃物が溜まらないように管理することも重要な訓練です。健康なからだに健全な精神と霊性が育つのです。
心理的な空虚感は、食べ物では満たされず、
主との親密な関係に基づく自尊心の回復によって満たされます。
上記の内容の一部は『傷つかずに最後まで愛する』(キュジャン、2018)から引用したものであり、該当出版社の同意を得て掲載しています。
本文は、『リビングライフ STORY 2021年4月』 (Duranno書院)より、抜粋したものです。