良き神様がなぜ地獄を造られたのですか | |||||
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良き神様がなぜ地獄を造られたのですか
ベク・チュンヒョン 長老会神学大学 組織神学 教授
聖書は、地獄についてどのように説明しているでしょうか。旧約聖書は、「よみ」(ヘブル語:シェオール)を死者たちがとどまる墓(創 37:35)、あるいは悪者が最終的に入る場所として説明しています(詩 9:16~17;31:17)。新約聖書は、地獄(ギリシャ語:ハデス)を「消えない火」または「暗闇」などと表現しています(マコ 9:43、Ⅱペテ 2:4)。私たちは自然と「良い神様が、なぜ永遠の地獄を造られたのだろうか」という疑問を持ちます。この質問に答えるためには、まず「良き神様」という表現の意味を詳しく見る必要があります。
良い神様ということばの意味は明瞭です。神様はいつも良い方だということです。神様は状況によって善と悪を行き来する方ではなく、善(good)そのものなのです。ダビデは「あなたは悪を喜ぶ神ではなく / わざわいは / あなたとともに住まないからです」(詩 5:4)と歌いました。神様だけが「善」そのものであり、すべてのものの絶対的な基準です。ですから、神様と美しい関係を結び、そのみこころに従って生きることは善であり、良いことです。一方、神様のみこころに逆らうことは、私たちがどう考えるかに関係なく悪であり、悪いことです。神様がエデンの園の中央にある善悪の知識の木から食べてはいけないと命じられたのは、人間を試すためではありませんでした。神様は人間がみこころに従って生きることを望まれたのです。しかし、人間は神様のみこころに従わず善悪の知識の木の実を食べ、自ら善悪を判断する主体、基準になろうとしました。自己中心、不従順の道を選んだのです。その結果、美しかった神様との関係は壊れ、神様の御顔を避けて隠れる罪人になってしまいました。神様は決して罪と悪い結果の原因提供者ではありません。そのすべての責任は、蛇の誘惑に負けて聞き従わなかった人間にあるのです。
神の国の反対、地獄
では、地獄とは何を意味するのでしょうか。その答えは、イエス様のことばの中にあります。イエス様は、手が罪を犯させるなら、その手を切り捨てなさいと言われました。片手を失っても永遠のいのちに入るほうが、両手がそろったまま地獄の火の中に入るよりは良いからです(マコ 9:43)。また、もし目が罪を犯させるなら、えぐり出すほうがましだと言われました。なぜなら、片目で神の国に入るほうが、両目がそろったまま地獄に投げ込まれるより良いからです(マコ 9:47)。
地獄は、神の国と反対の状態を意味します。聖書が語る神の国とは、場所や空間ではありません。神様の統治がなされ、みこころが行われていることです。これについてパウロは、「神の国は食べたり飲んだりすることではなく、聖霊による義と平和と喜びだからです」(ロマ 14:17)と説明しています。つまり、地獄は神様の統治がなされず、みこころが行われていない状態を指します。いくら良さそうに見えるものでも、神様との美しい関係が壊れているなら、それは「地獄」です。
自ら選んだ永遠の罰、地獄
神様はいつも正しく、良い方です。その神様の造られた創造世界が、主のみこころの中で美しい関係を結んでいるなら、神様の義と平和と喜びが臨みます。それは、神様の目に良いことです。しかし、主のみこころに逆らい、神様との関係が壊れるなら、恥と恐れと不安に陥ります。これは、罪による必然的な結果です。私たちはみな、最初の人間の罪によって死ぬべき罪人になりました。しかし、良き神様は、私たちが罪の中で死ぬままにしておかず、罪と堕落によって壊れた神様との美しい関係を回復するために、永遠のいのちの道を提示されました。「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに世を愛された。それは御子を信じる者が、一人として滅びることなく、永遠のいのちを持つためである」(ヨハ 3:16)。神様は、この道を信仰によって受け入れる者に永遠のいのちを与えてくださいます。「まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしのことばを聞いて、わたしを遣わされた方を信じる者は、永遠のいのちを持ち、さばきにあうことがなく、死からいのちに移っています」(ヨハ 5:24)。反対に、この道を拒む者はさばきと死に至り、最終的には永遠のいのちのない地獄に行きます。このすべての結果は悪者自身が招いたものであって、良き神様が行われたことではありません。「主はご自身を知らしめ / さばきを行われた。悪しき者は自分の手で作った罠にかかった。悪しき者は / よみに帰って行く」(詩 9:16~17)。私たちは「なぜ地獄が存在するのか」と疑問に思う前に、私たちを救ってくださった神様のみこころに従って生きるために努力するべきです。神様が与えてくださる永遠のいのちを慕い求めることを優先するべきなのです。
地獄は永遠のいのちと対比される状態であり、
これは悪者自身が招いた結果です。
本文は、『リビングライフ STORY 2021年5月』 (Duranno書院)より、抜粋したものです。