天の御国はどんな所ですか | |||||
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天の御国はどんな所ですか
ベク・チュンヒョン 長老会神学大学 組織神学 教授
イエスが公生涯を始めてから最初に宣べ伝えられたのは、「悔い改めなさい。天の御国が近づいたから」(マタ 4:17)というみことばでした。天の御国はイエスが伝えた福音の中心部分となる内容で、マルコの福音書とルカの福音書では「神の国」と表現されています。天の御国と神の国は異なる意味を持っているのではなく、状況と聴衆に応じて使われている互換的な概念です。では、天の御国と神の国とは、果たしてどんな所なのでしょうか。クリスチャンはこの概念をどのように理解するべきなのでしょうか。
神の国を望む
「神の国」のギリシア語は「バシレイア・トゥー・セウー」です。「バシレイア」は「国」を意味します。国を構成する3つの要素は、領土と国民と主権です。この中で最も重要なのは主権(統治権)です。神の国も、何よりも「神のみこころ」、つまり神の統治権が実現されることが重要です。神の国では神のみこころが「現在」と「未来」という2つの次元で成し遂げられます。まず現在の次元は、今日この地において神の統治とみこころが成就されることです。イエスが公生涯で悪霊を追い出し、病人を癒やし、飢えた者に食べさせた働きが、それに当たります。未来的次元は「もし、あなたの目があなたをつまずかせるなら、それをえぐり出しなさい。両目がそろっていてゲヘナに投げ込まれるより、片目で神の国に入るほうがよいのです」(マコ 9:47)というみことばのように、地獄と対比され、聖徒が後に入る神の国を意味します。
このように、神の国は現在の次元と未来の次元を包括しているため、神の国に対する私たちの関心は、物理的な行為や地理的な空間にとどまっているべきではありません。クリスチャンは神のみこころを行うこと、つまり、神と結ぶ美しい関係にもっと関心を置かなければならないのです。「なぜなら、神の国は食べたり飲んだりすることではなく、聖霊による義と平和と喜びだからです」(ロマ 14:17)というみことばの、「義」(ギリシア語:ディカイオスュネ)は神の正しさを意味し、神と私たちの美しい関係を意味します。「平和」(ギリシア語:エイレーネー、ヘブル語:シャローム)は、創造世界全体が神様との美しい関係にあることを意味します。「喜び」(ギリシア語:カラー)は、神の国で味わう喜びと楽しさを意味します。地獄が神との美しい関係が壊れた状態だとすれば、神の国は神との美しい関係の中で神のみこころが成就される状態であると考えることができます。そのため、私たちは、現在の人生において神の国を味わうことを願い求める必要があります。終わりの日に神の国に入ることを慕い求める必要があるのです。神の国を慕い求め、主のみこころが天で行われるように、この地でも行われるように祈りましょう(マタ 6:10)。山でも谷でも、日々主イエスと住まえば、御国(神の国)の心地がすると、心から賛美しましょう(新聖歌268番)。
神の国を生きる
では、どうすれば神のみこころが行われる神の国を味わうことができるのでしょうか。イエスは、ご自分のところに来たパリサイ人ニコデモに「人は、新しく生まれなければ、神の国を見ることはできません……人は、水と御霊によって生まれなければ、神の国に入ることはできません」(ヨハ 3:3~5)と言われました。新しく生まれなければ、だれも神の国を見ることも入ることもできないというのです。イエスは「富を持つ者が神の国に入るのは、なんと難しいことでしょう。金持ちが神の国に入るよりは、らくだが針の穴を通るほうが易しいのです」(ルカ 18:24~25)とも言われました。富そのものが問題なのではなく、富に身も心も奪われて、神のみこころを見失うことが問題なのです。
使徒パウロは、神の国を相続できない人がたくさんいることを指摘しています。「あなたがたは知らないのですか。正しくない者は神の国を相続できません。思い違いをしてはいけません。淫らな行いをする者、偶像を拝む者、姦淫をする者、男娼となる者、男色をする者、盗む者、貪欲な者、酒におぼれる者、そしる者、奪い取る者はみな、神の国を相続することができません」(Ⅰコリ 6:9~10)。しかし、そのような者であっても、「主イエス・キリストの御名と私たちの神の御霊によって、あなたがたは洗われ、聖なる者とされ、義と認めら」るなら(Ⅰコリ 6:11)、神の国に入ることができます。私たちが天の御国と神の国を心から望むなら、イエスが宣言された「悔い改めなさい。天の御国が近づいたから」(マタ 4:17)というみことばに従って、これまでの人生とは方向が全く異なる「悔い改め」(ギリシア語:メタノイア)の人生を生きなければならないのです。
天の御国は、神との美しい関係の中で
神のみこころが行われる所です。
本文は、『リビングライフ STORY 2021年6月』 (Duranno書院)より、抜粋したものです。