福音で問題を解決できますか

ベク・チュンヒョン　長老会神学大学 組織神学 教授

コロナの問題から生態危機、人工知能の発展を含む第４次産業革命に至るまで、今日の世界は大きな変化のただ中にあります。これは、世の中だけの問題ではありません。このような変化の波は、すでに教会とクリスチャンの人生の深みにまで影響を及ぼしているからです。急速かつ複雑に変化していく今日の世の中で、福音の力は、なおも私たちと世の問題を解決することができるのでしょうか。

福音とは何か

福音とは、文字通り、幸いな喜びの知らせです。「神の子、イエス・キリストの福音」（マコ 1:1）であり、「御国の福音」（マタ 4:23など）、「神の国の福音」（ルカ 4:43）です。この福音は、三位一体の神に由来するもので、「御父」なる神様が世を愛して遣わしてくださった「御子」イエス・キリストが、「御霊」なる聖霊の力を受けて生きる姿によって示し、宣言された喜びの知らせです。そのため、イエス様が公生涯の働きを始める時に宣言された最初のメッセージは、「悔い改めなさい。天の御国（神の国）が近づいたから」（マタ 4:17、マコ 1:15）というものでした。神様は、この福音を通して、信じる者が一人として滅びることなく救われ、永遠のいのちを持つようにしてくださいました（ヨハ 3:16～17）。

神学者たちは、この福音の意味について、「神の国」とは、神様の統治権、つまり神様のみこころが成就されることだと言います。クリスチャンの使命は、個人的な生活においても社会的な生活においても、神様のみこころが成就されるようにすることです。このような点で、福音は、私たちにこの世とは完全に異なる「究極的な価値」と「最終的な方向性」を示しています。福音にあって、私たちは、すべての面で以前とは異なる次元の人生を生きるようになり、以前とは違う世を夢見るようになります。ですから、福音は、私たちと世が経験する問題に対する答えを持っていると言えます。ここで、問題の答えは、「解決」と「解消」という二つの方法で与えられます。「解決」は、問題に対する答えが直接与えられることです。「解消」は、福音による観点の変化によって、以前は問題であったものがもはや問題にならなくなることです。

私たちと世の問題に対する答え、福音

第一に、福音は、個人的な問題に対する答えとなります。たとえば、職を探したり、重要な決定をしたりするとき、神様のみこころを求めて祈るなら、その過程で私たちが求めた内容が実際に解決されることがあります。また、福音を通して視点が新しく変えられ、これまで問題だと思っていたことが問題だと感じられなくなり、自然と問題が解消されることもあります。

第二に、クリスチャンとして、私たちは信仰にあって自我に死ぬ生き方をしようとしますが、次々とこみ上げてくる感情や衝動を抑えることができず、悩むことがあります。そのようなとき、私たちは神様の御前での礼拝や祈り、援助や善行のような信仰の訓練を通して、心の問題が解決されることがあります。また、福音を通して私たちの人生の根源的な動機や究極的な価値が完全に新しくされ、これまで悩んできたことが問題と感じられず解消されることもあります。解決であれ解消であれ、福音は私たちの人生の問題に対する確実な答えとなります。

第三に、福音は、社会的な問題に対しても答えとなります。今、全世界がコロナによって苦しんでいます。地球を脅かしている環境破壊は人類の存在と生態系を脅かしています。これらの問題に対して、福音は、直接的効果のあるワクチンや治療薬を提供したり、生態危機を解決したりすることはできません。しかし、問題が発生した根本的な「原因」（技術・物質万能主義、貪欲）に対する省察へと私たちを導きます。福音は、人間的な考えや視点を神様の視点へと変え、神様の方法で生きるように導いてくれます。社会的な問題や変化に対してどのように対処し、どのように解釈すべきか知恵を与えてくれます。福音は、個人的な問題だけでなく、社会的な問題に対する解決策を与えてくれるのです。

福音は「御国の福音」であり、神様のみこころが成就されることを期待し、待ち望ませてくれます。個人はイエス・キリストを信じることによって救われ、永遠のいのちが恵みとして与えられます。社会は、私たちが生活している地域から全世界に至るまで、神様の喜ばれる完全な創造の姿が回復されます。そのため、福音は、私たちと社会を含む「すべて」を更新します。すべての問題を解決し、解消するのです。福音は、私たちと世の問題を解決することができます。福音は、究極的に私たちとこの世のすべての問題の答えであり、解決策なのです。

神の国の福音は、私たちと世の問題に対して、

解決であれ解消であれ、答えを与えてくれます。

本文は、『リビングライフ STORY 2021年10月』（Duranno書院）より、抜粋したものです。