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宗教改革とは何か
by.CGNTV
hit 629 recomend 196 2017-10-10 16:15:03

宗教改革とは何か   

 

ルーテル学院大学 教授 江口再起

 

宗教改革とは

1517年10月31日、ドイツの“ヴィッテンベルクの城教会”の門に、若き修道士ルターが「95ヵ条」を貼り出しました。宗教改革運動の始まりです。内容は免罪符の問題についてです。それを買うと、死後、煉獄ではなく天国に行けるからと、教会が販売したのですが、ルターはそこに疑問をもちました。「お金で救いが買えるのか、救いはお金どころか、人間の力をもってして獲得できるものではなく、ただ神の恵みによるのではなかろうか」。「恵みのみ」です。そこで、彼はこの問題についての討論会を呼びかけたのですが、その50年ほど前に発明された活字印刷術のおかげで「95ヵ条」がたった2週間で全ヨーロッパに広がりました。

ローマ教皇庁との激しい論争が始まりました。やがてそれは信仰上の問題を超え、政治上の問題となっていきました。そして、ついにルターはヴォルムスの国会に呼び出され、皇帝カール5世から自説の撤回を迫られます。しかし、彼はそれを拒否し、こう叫びました。「われ、ここに立つ」と。ルターは異端として破門されました。彼自身は教会分裂を意図していたわけではありませんでしたが、結果的にそうなってしまいました。改革運動はプロテスタント教会の形成へと向かい、礼拝改革から始まり、教会制度の改革、教育改革、さらには社会改革(「共同金庫」など)へと広がっていき、ついには近代という時代の扉を開いたのです。

宗教改革には、三つの大事な思想があると言われています。その第一は、「信仰義認」です。「義認」とは救いのことですが、救いはあくまでも神からの贈り物(恵み)であり、信仰を通して感謝をもってその恵みをいただくのです。ですから、救いは決して人間の力でなしうるものではありません。これが、宗教改革の最も大事な思想だと言えるでしょう。

第二は「聖書の権威」です。一人ひとりが真摯に聖書に向き合い、そこから響いてくる神の声(心)を聴きとることが大事です。実際ルターは、聖書を民衆の一人ひとりが読めるようにとドイツ語に翻訳しました。聖書の各国語訳の始まりです。

第三は「万人祭司」です。神の前にはすべての人が平等です。教皇が一番偉くて一般信徒は救いから遠いなどということはありません。一人ひとりが、あたかも祭司であるかのように神に仕えるのです。万人祭司とは、すべての人が祭司である、という意味ではありません。一人ひとりが、それぞれ神に与えられた務めを果たすということです。

 

宗教改革五百年、日本の教会に望むこと

宗教改革500年を日本の教会はどのように迎えるべきでしょうか。私は大きく三つのポイントがあると考えています。

 (1) より広く

視野の拡大です。宗教改革について考えることは、500年前のルターのことだけでなく、より広くプロテスタンティズム全体のこと、さらに広く、カトリックをも含めたキリスト教全体のこと、また、さらに広く、ある意味、宗教改革が生み出した近代世界の全体、さらには近代以後の現代世界について考えることが大事です。日本の教会はともすると自分の教会のことばかりに、あるいは自分の信仰のことばかりに集中しがちです。しかし、神は世の始めに「教会」を造ったのでなく、「世界」を造ったのです。

(2) より深く

原点の確認です。宗教改革が目指したこと、ルターが本当に言いたかったことを、もう一度しっかり確認し、深めることが大事です。それは何でしょうか。神の「恵み」です。聖書が示す神は「恵みの神」であるという原点をいつも忘れないようにしましょう。近年、教会の中で、断片的な知識にもとづく内容空疎な決まり文句や自分の教派やグループの論理にしがみつき、聖書やルターが語った骨太な信仰の論理が聞こえてきません。第一、どれだけ本当に私たちはルターのこと、宗教改革のことを知っているでしょうか。真剣に学ぶ気持ちが不足してはいないでしょうか。

 (3) より前へ

未来志向ということです。目を前に向けましょう。教派間やグループ間で互いの違いにばかり目を向けるのでなく、神が造られたこの世界のすべての人々と共に生きていくことを真剣に考えましょう。カトリック教会は20世紀の半ばに大きく方向転換をし、すべての教会、すべての人々との共生に向かって歩みだしました(第2バチカン公会議)。そのようなカトリック教会と共に、プロテスタント教会も力を合わせ、この世の不幸な現実克服のために力を尽くしましょう。これこそが、イエス・キリストが望んでおられることではないでしょうか。

 

江口再起

1947年生まれ。獨協大学、日本ルーテル神学校卒。ドイツ・エルランゲン大学留学。東京女子大学教授を経て、日本ルーテル神学大学(現ルーテル学院大学)教授となり、現在に至る。日本ルター学会理事長。ルーテル学院大学ルター研究所副所長。日本福音ルーテル教会エキュメニズム委員会委員。日本基督教学会会員。

 

本文は、『リビングライフ STORY 2017年10月』 (Duranno書院)より、抜粋したものです。

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