イエスの生涯の光と闇 | |||||
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イエスの生涯の光と闇
姫井雅夫 日本基督教団 赤坂教会牧師
救い主イエス・キリストの生涯をざっと見ると、誕生(クリスマス)、洗礼、十字架刑、埋葬、復活(イースター)、昇天、再臨の7段階があるように思います。
私たち人間の生涯を見ると、だれにでも誕生の時があります。イエスを救い主と信じた者には洗礼があります。十字架刑は、殉教の死を遂げる時代や環境が再びあるなら、体験させられることもありうるでしょうが、今のところありません。しかし、死はだれもが経験します。そして、儀式の方法は違うかもしれませんが、葬儀と埋葬があります。一方、自然界の地震や洪水などによって海に流されたり、地に埋もれたりして、今もって死体を見つけることができていない人々もいます。いずれにしろ、死はすべての人が体験するものです。
その後の復活については、まだ体験している者がいません。目で見える形での復活(栄光の体)は、後のことになります。今、地上に生かされている私たちは、死、埋葬、復活、昇天、再臨は、ずっと後に体験させていただけることでしょう。
イエスの誕生は、待ち望まれた「救い主」の誕生でした。この世に光をもたらす方の誕生です。しかし、現実は、ヨセフとマリアは宿泊する宿屋さえありませんでした。薄暗い家畜小屋が誕生の場でした。生まれて寝かされた所は、やわらかいベッドではなく、飼い葉桶でした。光と闇の対称を見る思いがします。
イエスによる証し、お話は「光」でした。人々の心に希望を与え、病める人々を癒やす奇跡が行われました。丘にイエスの話を聞こうと群衆が詰め掛けました。5千人の給食がなされ、群衆は神の偉大さを知りました。
しかし、この光の裏に、闇がありました。当時の指導者や祭司たちは、イエスの存在を疎ましく思い、ことごとく敵対しました。
イエスの生涯の終わりが近づいてきました。イエスがロバの子に乗って、エルサレムに入って行った時、多くの群衆に囲まれ、「ホサナ」の叫び声で歓迎されました。ロバのそばを歩いていた弟子たちは、どんな気分だったでしょうか。日本での天皇の即位式や街頭でのパレードに付き従っていた関係者は、同じような感情を抱いていたかもしれません。
イエスは、やさしい愛の光を放っていたのではないでしょうか。人々は尊敬と憧れの思いで、「ホサナ」と叫んでイエスを迎えました。光が周りを照らしていたことでしょう。しかし、数日後にイエスは捕らえられ、あちらこちらと引き回され、最後に「十字架につけろ」という群衆の声に、弟子たちは姿を消しました。
イエスのことを心配したペテロは、裁判の庭まで入り込んできましたが、人々から問い詰められると彼は「イエスのことなど知らない」と3度も叫び、イエスとの関係を否定しました。イエスは鞭打たれ、傷だらけになり、十字架を背負わされてゴルゴダへと向かいました。イエスを誇りに思っていた弟子たちはどこへ消えたのでしょうか。これは、イエスの生涯の闇の部分です。弟子のヨハネだけはイエスの母マリアのそばにいたと記されています。群衆も祭司長たち、律法学者たちも一緒になって、イエスを嘲りました(マコ 15:31)。そして、闇が全地を覆いました(マコ 15:33)。イエスの両手両足には釘が差し込まれ、死の確認のためにわき腹にやりが刺しぬかれ、血が滴り流れました。まさにそれは、暗黒の闇でした。
しかし、これで終らないのが救い主イエスです。ふたたび光が射し込んできます。
女性たちが、週の初めの日の早朝、日が昇った頃、光が周りを照らし出してきます。闇と思われるイエスが葬られた墓から、光が洩れ出てきます。そうです! イエスはよみがえられたのです。
私たち一人ひとりの人生にも「光と闇」があります。人生には、入園・入学、進級、就職、結婚など、光と言える時があります。あるいは、落第、失格、病気、失恋、離婚など、人生の闇と言える時もあります。人生には、光もあれば闇もあるのです。救い主イエスの生涯にもいろいろな局面があったことを知るなら、私たちのそのような局面も納得できます。
さて、今あなたは「光」の時を過ごしているでしょうか、それとも「闇」の日々を送っているでしょうか。イエスの地上での生涯の終わりは「光」で包まれていました。いや、今も光を放っています。私たちも、地上の生涯の中で光と闇がありますが、イエスへの信仰のゆえに闇から光へと移されるのです。
イエスのこの世での生涯が「十字架の死」という闇から、「復活・昇天」という光に輝いたように、私たちも主のあわれみと恵みのゆえに、死を通して永遠のいのちに与り、召天させていただけるのです。ハレルヤ!
姫井雅夫
中国・上海で生まれ、北九州で育つ。立教大学、インマヌエル聖宣神学院卒業。1968年、山口県で3つの開拓教会を牧会。1988年、日本基督教団赤坂教会牧師に就任。現在、赤坂教会牧師、総動員伝道委員長、伝道団体連絡協議会会長。
本文は、『リビングライフ STORY 2020年4月』 (Duranno書院)より、抜粋したものです。